知育楽器やギターピック、音楽雑貨をはじめとする音楽関連製品のメーカーであるナカノは創業50周年を目前に控えている。そんなナカノの2代目社長が、これまでのあゆみと、次の50年を語る。

ビジュアルデザインへ憧れ、ニューヨークで過ごした学生時代

―まずは、社長が2代目として事業を継ぐまでの経緯について、興味があるのですが、そもそも社長はどんな想いがあって2代目として経営に携わるようになったのでしょうか。

実は、元々は海外にとても憧れがあったんです。当時、ビジュアルデザインにとても興味があって、高校はニューヨーク、その後も海外で普通の大学に通っていました。

海外のデザイン、文化に憧れを持っていたわたしは、まず外国(西洋)に溶け込みたいと本気で思っていたんです。(笑)
それで、まずは海外で生活をするということを叶えたわけですが、ニューヨークの美術大学への入学がどうしても諦めきれず、一度日本へ戻ってから本格的に美術の勉強をはじめました。

―どんな勉強をしていたんですか?

イラストレーションとグラフィックデザインですね。何かをカタチにするということにやっぱり興味があって、デザインの基礎から学ぼうということで。

―イラストレーションとグラフィックデザインですか(笑)、音楽となかなかつながらないんですが。。

そうなんです。それで、なぜナカノで働き始めたかというと、ニューヨークの美術大学への入学直前に、父の会社であるこの会社を手伝っていたんです。そうしたら、いろいろと縁があり、気づいたら入社することになっちゃったんですね。(笑)

―えー、デザインの夢とかどうしたんですか?(笑)

そう、普通だったら強い想いで夢は叶えなきゃって意地でもニューヨークに戻ったりするんでしょうけど、ここで任せてもらったのが、商品の企画やマーケティングディレクションなど、広い意味でデザインをする業務だったこともあって、次第にやりがいを感じるようになって、気づいたら熱中していたんです。

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フォークソングブームとギターピック世界初の製品化で会社が加速

―社長のストーリーも、もっと掘り下げて聞いていきたいところですが、ここらへんでナカノのあゆみについても興味がわいてきました。

ナカノの始まりは先代が起業を考え、1960年代の後半に下町のべっ甲職人のもとに出入りしていたことが始まりなんです。

―べっ甲って当時はどんな製品に使われていたんですか?

当時、べっ甲は櫛(くし)や簪(かんざし)といった製品に使われるのが一般的だったんですけど、同時にギターピック等の製造も行っていたんです。

当時、音楽はまだ富裕層の楽しみだったんです。ギターピックもギター本体とセットの付属品であって、端材などを活用して職人が作っていたんです。あくまでもギターピックは附属品だったので、無料が当然で、品質もよいものではありませんでした。そんな日常から、「ギターピックはもっと価値があるんじゃないか?」とでも父は思ったのか、ピックを単体の製品として流通させることを思いついたんです。

―そうなんですね。ギターピックは今では買うものというのが当たり前な気がしますが、ナカノさんがそのはじまりだったとは。。

そこから営業を始めたみたいなんですけど、ちょうど日本はフォークソングブームだったんですね。どんどん音楽が大衆化していく中で、フォークギターを持つ人も増えていったんです。そんな時代を背に、父はピックの本格的な商品開発や加工をはじめたんです。そして、ギターメーカーのブランド名を入れてピックに付加価値を与えたんです。当時ギターアクセサリーの専門業者がおらず、製品として確立したところに先進性があったんだと思います。人のやっていないことをやり、新しいビジネスアイディアを目指していくという父の姿勢がカタチになった瞬間でもあります。

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―ピックにそんなストーリーがあったんですね。それでPICKBOY(ピックボーイ)と提携してブランド名をつけたということですか?

いいえ、大手の流通をもつ企業さんとの提携などもうまくいき、ナカノのピックが知られるようになっていったんですね。それで、PICKBOY(ピックボーイ)という自社ブランドをつくったのが今につながるPICKBOY(ピックボーイ)です。

―え、PICKBOY(ピックボーイ)ってナカノさんの自社ブランドなんですか?!完全に海外発のブランドだと思い込んでいました!すみません。。

いえいえ大丈夫です、実はそうなんです。(笑)そんなわけで、わたしが入社した当時はギター周りの製品が主力商品だったのですが、その他の商品開発にはわたしも携わることができました。切符が挟まっていた金具から発想を得て、ピックケースをつくったり、靴のシューツリーから発想を得て、ネジ式のカポタストをつくったり。

―ネジ式のカポもナカノさんが始まりなんですね。いやー、知ってる製品だけれど知らなかったことが今日はいっぱいです。